「WOOMAN "A NAME" CHRONICLE -PART ONE-」



WOOMAN ニューアルバム「A NAME」発売を記念して「WOOMAN "A NAME" CHRONICLE 」と題しメンバーによる全曲解説インタビューを前半、後半に分けて公開します。アルバム制作の過程やその曲の誕生に至る経緯など既出のインタビュー記事では明かされていない部分についても詳しく語ってもらいました。つまりはニューアルバムを深く楽しむためのグッドテキストになっています(マジ)!音源を聴く前でも後でも、是非一読ください。まずはアルバムが出来るまでの振り返りと前半4曲についての解説になります。どうぞ!

聞き手 : Naoki Takano


ーーついにニューアルバム、できましたね。

YYOKKE(Vocal&Guitar) : タイトルから聞くの?

ーーいや、まずは前作から話を。

YYOKKE : 2016年に ”LOST LOVE” をリリースしてからの話だよね。

ーーそこからどういう動きを?

YYOKKE : 細かいのは色々あるんだけど。大きな出来事としてはその直後に2017年に入ってDYGLのアルバムジャケットのデザインをやらせてもらうことになって、その流れでDYGLと一緒に行ったSXSWで見たバンドに色々と影響を受けたんだよね。

ーー何かあったんですか?

YYOKKE : とにかくMerchandiseのライブでの振る舞いが良くて。4ADからリリースしていて、それなりに知名度もあるバンドがさらっとライブする格好良さがあって。お客さんに無茶振りされてMCで答えたり、ジョークを言ってふざけたりとか、でもライブはがっちりやるみたいな。そういう人間臭い振る舞いだけど ”曲はしっかりやる” 所に魅力を感じて。そういうスタンスに感銘を受けたのはあるね。その時に見たThe DISTRICTSやMerchandise はとにかくライブがエモーショナルだったんだよね。そんな風にエネルギーを解放してやりたいってのは影響受けたと思う。

ーー旅が影響を与えたんですね。

YYOKKE : そう。そこから思考が変わって歌ものにシフトしたのは少なからずあるね。歌ものにシフトしたほうがライブでの反応が良かったのもある。そこから次のアルバムに向けて半分録り終えてたんだけど、昨年春にKilikilivillaからリリースの話があって、改めて録り直したのよ。

ーー作りかけてたのにボツにしたんですか?

YYOKKE : 一発で録音した方が全体のトーンが揃うからね。そこは徹底して。録音した曲もどんどんライヴで変わっていったので、最新の、今を届けたいなという気持ちもあって。ライブで1年やった曲だから録る時にはもう新曲やりたい気分だったけど(笑)。

ーーなるほど。結構古い曲が多い感じなんですね。

YYOKKE : そうだね。”LONG STANDING” が一番新しいくらいかな。でも、それももう一年前だよ!

ーーどんどん変わっていくんですね。

YYOKKE : ライブで検証してレコーディング直前に構成を変えた曲もあるね。

ーーレコーディングはどうでしたか?

KOUTA (Drums) : 楽曲単位の展開はしっかりと仕上げた状態でレコーディングできたので、アルバム自体の展開を意識して取り組めたかな。

YYOKKE :  MIXを今回YAKKくん(HARVARD)にお願いして。YAKKはもう長い友人であって同世代で同じような音楽を好きなところがあって、普段からレコ屋で会ったり飲みに行ったりして、音楽の話をいつもしてたんで色々めちゃくちゃ話が早いんです。Big Pinkのあの感じね〜とかLISSのスネアがいいよね〜とか。彼のアイデアで少し音質やフレーズの入れ方を変えた曲もあって、最終的にポップな方向でまとめてもらった感じですね。

ーー前作から大分曲の方向性が変わりましたよね?

YYOKKE : その辺は詳しく話しているAVYSSの記事を読んで下さい(笑)。

ーー頭から端折りますね(笑) 。アルバムがこうして世に出て、今どんな気分ですか?

YYOKKE : もう一年以上前からアルバムに向けてのレコーディング作業をやってきたので、これでようやく一区切りでって感じですね(笑) 。でも早く次を作りたいです。

YUUKI (Bass) : 色々な人が関わって、時間をかけて、1つのものを作り上げてく素晴らしさにあらためて感動したねー。レコーディング中から良いモノが出来たと思ったし、あっ、バンドやってて良かったって(笑) 。

ーー各々、色々感慨深いものはありますよね。そろそろ全曲解説、前半いきましょうか。


「STILL INSIDE」

ODA (Guitar)  : アルバムの冒頭を飾る、2ndアルバムの方向性を決めた1曲ですね。この曲が出来てなかったら、今のサウンドにはなってないと思うので感慨深いです。

YYOKKE : この曲は皆んなで新しいとこに行くぞっていう気持ちを持って作ったかな。皆んなを納得させたい、新しいWOOMANを提示したい気持ちで作りました。家で弾き語りみたいなスタイルで鼻歌から作った曲なんだけど、インディーロックのフォーマットではないアレンジにしたいなと。4つ打ちだけどダンスっぽくなくやりたかった。スネアの数もめっちゃ少ないからね(笑) 。

ーーどういうところが”フォーマットを回避した”ポイントなんでしょう?

YYOKKE : セオリーでは無いリズムで出来ているというか、普通に8ビートでもやれたかもだけど、全編タムがドコドコしてる感じでやりたいなと。でもネオアコ好きでも反応できるキラキラ感は残したいというか。あと、スリーコードくらいで作りたいっていうモードでもありましたね。

ーーすぐに歌ものをバンドとして受け入れられたのですか?

YYOKKE : 最初はメンバーはピンと来てなかったけど、歌詞を固めて一人で青山のNOAHでボーカル録音してみんなに聴かせたら良いじゃん!ってなって。この曲は次のWOOMANの方向性として絶対に大事なものになる!と思ったんだよね。この曲が生まれたことで次のアルバムが出来ると思ったね。

ーーそこに至るアイデアはどういったものだったんですか?

YYOKKE : これはあまり言うとアレなんですけど、前作 ”LOST LOVE” のリリース直前に突然父親が亡くなって、もう人生の半分を持っていかれたくらいの気持ちになって。父親は60代前半で亡くなったんですけど、今僕が30代なので、あと倍生きたら死んでしまうんだなって。死を今まで以上に意識した出来事があって。ただ、死んでもいなくなってしまうんじゃなくて寧ろその人柄だったり、浮き上がってくるものがあって、そういう体験をした事でこの先の自分を考えることになって。あと早くて30年かと思うとやり切らないとやり切れないと思うようになって。そこで書いた曲です。

ーーそこからの心境の変化がどのように影響したんですか?

YYOKKE : ファンタジーで歌詞は書けなくなって、常日頃考えている事とか思っていることを書かないと、歌わないとこっから先バンドをやれないなと。それまでは音楽をどこか楽しいところ、遊ぶ場として捉えていた部分があったけど、そこから意識は変わったと思いますね。音楽に対する姿勢を見直したというか。意識改革に随分時間かかりましたけど(笑)。

ーーその出来事は人生においても大きな事ですよね。

YYOKKE : そう。STILL INSIDEは単純に訳すと”まだ自分の中にある”みたいな意味だけど。父親は亡くなったけど、どこかしこに存在していて誰かの話の中で話題になったり。極端な話をすると、生きていても存在感がないように感じる人もいるし、亡くなってもいつも思い出されて存在感が増す人もいる。それが不思議で。記憶にあるものが存在を作り出すような。

ーーなるほど。

YYOKKE : 過去の体験や記憶が自分にあり、何かに繋がっていくようなね。過去に作ったものが自分を助けることがあるって最近思っていて。

ーーこの間のOTOTOYのインタビューでも話していましたね。

YYOKKE : 日々蓄積したものが後々エネルギーになるってことがあるんですよ。目の前にあるどんな小さなことでも。それに気付けばもっとポジティブになれるんじゃないかって。気付かないだけで、目を向けていないだけで、面白いことは自分の中にあるし、掘り下げていけばいい。それは自分次第なんだって言う事。それは父親が亡くなって気付いた事ですね。なので、タイトルは ”STILL IN MY HEART” でもいいんだけど(笑) 。もっと内包している感覚的なニュアンスなので、"INSIDE" としました。この曲が、アルバム「A NAME」を作ったと言っても過言ではないですね。

ーーみんなにとっても大切な1曲になったと。

YUUKI : うん。確かにさっきyokkeが言ってたように一番最初のデモの段階では全くピンときてなかったけどね(笑) 。やっぱり、この曲が指標となって2ndアルバムが出来上がったと思うし、自分達でMV撮影もしたし、LSTNGTにREMIXもしてもらった。この曲が無かったら今の状況は無いね。

KOUTA : ライブを重ねることで、お客さんや友人達の感想を聞くことで新しい発見をして成長してきた曲だと思ってます。最初にも最後にも聴きたい大事な曲です。

YYOKKE : Cコードで始まる時点でポジティブだしね(笑) 。


「NO TROUBLE」

YYOKKE : 所謂 ”ロックンロール” や "ガレージロック" をWOOMANでやろうとしたんだけど、ど真ん中にはならなかった曲(笑) 。この曲はぶっちゃけCAZALSDMA’Sからのインスパイアですね(笑) 。

ODA : ギターのリフが印象的ですね。ライブでもみんなで合わすのが気持ちいい。

YUUKI : ライブでまだ成長を続けている曲だと思う。

YYOKKE : これはメロディ先行で出来た曲で、歌詞については自分の価値基準を持っておかないと迷ってしまう時代についての歌ですね。わかりづらい時代をどう生き抜くか、戦い抜くか。

ーー戦いの歌なんだ。

YYOKKE : 世の中が疑えるものばかりになってしまって、何が嘘か真実かわからないじゃないですか。その中で何を選ぶのか?って言う。生きるのは選択の連続なので、自分の選択をもっと責任を持って行けばいいんじゃないかと。他人のせいにする人が多いと思うんだよね。

ーー確かに。もう情報が溢れすぎている感ありますね。

YYOKKE : 自分でちゃんと考えたらいいんじゃない?と思う。誰かの真似は誰かの人生を生きているようなものだから、自分で選んだ方が美しい人生なんだと思うけど。なので ”狂った世界であなたは何を選ぶ?” という締めになっていて、問いかけて終わっています。

ーーこの曲自体が問いになっていると。

YYOKKE : そう。誰しも死ぬときに悔いを残したくないじゃないですか。でも他人のせいにしてる時点でそれは悔いになるから。もっと広い視点で物事を見ればより良い生き方ができるのではないか?そんな曲です。

ーー聞き所は、何かありますか?

YUUKI : レコーディングで急遽録った1:29あたりのギターバッキングが最高です。ODAさんが忘れなければライブでも弾いてます(笑) 。

KOUTA : リフを軸にしたシンプルな楽曲ですが、ドライにならない抑揚と展開、時に感情的なボーカルがバランスよく混ざってると思います。

YYOKKE : 今はライブで定番のWOOMAN民権を得ている曲だと認識しています(笑) 。


「MAGENTA RING」

YYOKKE : ODAさんの好きな曲ですね(笑) 。

ODA : 自分の中でシングルカットするならこの曲と決めてました。ノスタルジーに浸れるいい曲。

YUUKI : 終始泣ける。ずっと泣いてる。

KOUTA : 2018年にシングルでもリリースした楽曲。音色次第で印象も大きく変わる曲だと思っていて、僕個人としては、今回はLast days of aprilのような90~00年代の北欧エモのイメージでやりました(笑) 。

YYOKKE : WOOMANでミドルテンポの曲をやりたいなと思って作った曲です。本当はライブでもアコギでやりたいんだけど、今のところ実現できていない(笑) 。スウェーデンのインディーポップをイメージしたが結果こうなってしまうんですよ、WOOMANだと(笑) 。

ーーミドルテンポにトライして苦労したところはあります?

YYOKKE : でも結構スルッとできた曲かな。初めから構成ができていたので、割とデモそのまま。少し直したぐらいかな。今回のアルバムでセブンスコードを唯一使った曲なんだよね。”LOST LOVE” 以降セブンスは禁止していたんだよ(笑) 。セブンスに甘えると良いことない!って。ウチらの場合は、だけど(笑) 。

ーーでもそのコード感が効いてますよね。歌詞については?

YYOKKE : 男女の別れの歌。いつの間にか居なくなってしまったことに気づけなかった悲しい男の歌。別れが来た理由はわからないけど、指輪だけはそれを知っているって言う、ファンタジーな内容です。

ーーファンタジーもあり、ラヴソングってことですよね。

YYOKKE : ロックバンドっていつの時代もラヴソングを歌うじゃないですか。WOOMANも一曲くらいラヴソングをやろうと。で、ウチらが作ったら別れの歌になったんだよね(笑) 。過ぎてしまったラヴソング、哀愁ラヴソング。

ーー歌詞のイメージは最初からあったんですか?

YYOKKE : メロディから想起した内容でもあるね。音に引っ張られて書いた歌詞ではある。この曲は別れた男女の歌だねって。

YUUKI : そんなイメージ通りのMVがあるので是非見てみて下さい。

YYOKKE : って男女の別れの要素無いけど(笑) 。

ODA : 寒い中MV撮影したのを思い出します。



「EVEN A BIRD」

YYOKKE : バンドの可能性として所謂 ”エモーショナル” をもう少し追求してやりたいなと。前半ボソボソ歌って思いっきりフックが爆発するみたいな。インディロックでは無いエッセンスのものをやりたくて、チャレンジ曲です。他の曲と少し色が違うので最後まで入れるのか悩んだんだけど、このアルバムに必要かどうかというところで。でも可能性を見せるっていう意味で入れた曲ですね。

ーーチャレンジ曲なんですね

YYOKKE : そう。今までにないタイプの曲をやりたかったというのがあって。高校生の頃聴いていたGet up kidsとか、Promise RingHusking Beeとか、Weezerもちょっとあるかも。そういうのを思い出してやってみたのよ。あと、この曲は縦ノリではなく横ノリって感じで、薄っすら下敷きにヒップホップっぽいものをやろうとしたのはあって。でも皆んなで練っているうちに全然違うものになったけどね。時間をかけてここまで持って来た感じ。

ーー確かにフックにはヒップホップっぽさありますね。

YYOKKE : でもバランスは大事で。その中でもロックバンドのダイナミズムみたいなものを入れたかったので、サビ終わりのリフとかね。あと、最後の大サビは歌い上げるというかは言葉を乗せてるだけ、みたいな感じは意識しましたね。

YUUKI : シンガロング感が気持ち良いよね。

ーー3段階くらいでエンディングに向かっていく感じですよね。

KOUTA : コンパクトながらストーリーのある聴きごたえのある曲ですね。

YYOKKE : これまで以上に ”エモ” を意識した曲なんだけど、やってみて実際ちょっとやりすぎたかなとも思ったんですよ(笑)。次のアルバムでこういう路線でいくのかどうかは分からないけど、レコーディングって記録なので、今のWOOMANの記録として残しておこうって。アルバム全曲中でも一番自分達の中に無いものをトライしてみた。やってみたっていう。

KOUTA : 曲単位で聴いても良いんですが、アルバムの中盤にこの曲を入れられて良かったかな。

ーー歌詞については?

YYOKKE : 歌詞の内容は "NO TROUBLE" に近いものがあって「空を飛べる鳥でさえも世界の全てを見る事をできない」と歌ってるんですけど、時に世界の全てを見ることも必要なんだけど、すぐ近くの事に目を向けるのも大事なんじゃない?自分の周りの事を変えていく事で世界も変わっていくんじゃない?っていう内容ですね。ただ機会を待っているだけでは何も変わらないよ、という。

ーーなるほど。この曲はアルバム中でもメッセージ性の強さが一番ある気がします。

YYOKKE : やっぱり歌いたいことが以前とはガラッと変わっていってるていうのはあるね。

それでは前半はこの辺で。また後半に続きます。
(後半はこちら)

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